特に作曲家を目指すという人には知っていただきたい話なのですが映画音楽をサントラなどで聞いて例えばピアノだけのシンプルな曲があったとします。
それを聞いてあ、これは自分にもできそうだなとか大して難しい事はやってないな・・・なんて思う事もあるかもしれません。
ところがこうした曲は作るまでの過程があって発注者(基本は監督)の要望を具現化した結果のものであるわけなんですね。
要はなんとなくイメージで作った、という薄っぺらいものではないという事なんです。それと作曲家自身は指示通りに作ってイメージもこれでぴったりだろうと思っていても監督からすると違う、という事はもちろんあるわけなのです。
もちろんこうした相違がないのが理想ではありますがこうしたやりとりを繰り返しながら出来上がったのが「これなら自分にもできそうだ」という楽曲になります。
そして映画の場合は尺が明確に決まっています。入口のドアが開いてから主人公が椅子に座ってコップを置くまで、のように完全に時間指定で作ります。
8小節一区切りのような教科書的な作曲の仕方だとうまく収まらない事もあります。
それとやっとできたと思ったら編集で尺が変更になる事もあります。正直ゼロから作るより修正で尺を合わせるほうが難しいケースもあります。
尺が長くなったので途中に盛り上がりが欲しい、なんて事もあります。そうすると設計図から見直す事にもなります。なので違和感なく曲を付け足す能力も必要になります。
そしてどちらかと言うとこっちが大事かもしれませんがせっかく完璧に作ったのに手を加えるのか・・・という精神的ダメージを追わない事が大事。
決して監督は曲の善し悪しを言ってるわけではありませんので。
繰り返しになりますがこうして出来上がった曲が「自分にもできそうだ」な楽曲なのです。
ただし本当に好きでやってる人であればこうした修正作業は「よーし任せろ!」という気持ちになると思います。
映画でもちょっとした動画用でも尺を指定通りぴったり合わせるのがいわゆる劇伴を作る際の一番のやりがいじゃないでしょうか。
修正して短くなってしまった曲は後でサントラを出してロングバージョンとして別枠で入れてもいいかと思います。いずれにせよ作った物は無駄にはならないので損得勘定なども考えずひたすら映像に合わせた曲を作っていくというスタイルで臨むのがいいかと思います。作品が完成したときは感動も一入(ひとしお)です。